2021年11月15日(月)
2021年11月16日火曜日
踏み切り板をとべ - 九州の旅(6)
2021年11月15日(月)
踏み切り板をとべ - 九州の旅(5)
2021年11月14日日曜日
踏み切り板をとべ - 九州の旅(4)
2021年11月13日(土)
朝7時のアラームをかけたが、4度か5度スヌーズを止めて、起きたのは8時。部屋は暗い。シャワーを浴びて、バイクに乗るための暖かい格好に着替える。ヒートテックを履く。上は4枚重ね着する。だがこれから乗るのは電車だ。
その前に、昨日行ったカフェにもう一度、今度はモーニングを食べに行く。僕が最初の客だった。その後すぐに4、5人の人が入ってきて注文する。二番目に入ってきたいかつい男の人が、クリームソーダを頼んだ。僕はサラダと目玉焼きとトーストの豪華なモーニングを箸で食べ、締めにクリームを入れたコーヒーを飲む。
小倉駅へ。昨日、門司港にバイクを置いてきたので取りに帰る。ついでになんの縁か、たまたま今日門司港に着くという、かつて一緒に働いていた二人の友人M、Iと、昨日の友人Kとで合流して会うことになる。
僕は一足先にバイクを回収する。昨晩お酒を飲んだから、カブはKが働く宿に置かせてもらっていた。宿の「女将」であるさくらさんにもお礼を言う。昨日見た地平線を、今度は明るいうちに見に行く。同じ道を走っても、夜、雨の中で行くのと晴れた青空の下で行くのでは全く違う。走るには、晴れている、明るいうちがいい。
灯台に着いて、100段くらいある階段をまた上まで登る。50代同士くらいの夫婦が階段の途中で景色を見下ろしていた。天気いいですね、と挨拶し、追い越す。灯台がある高台のてっぺんに着いたら、僕も海を、上から見下ろす。
船が行き交っている。
夜の方が船は大きく見えていたような気もする。
波の音は聴こえない。
今日は、いい景色だな、とだけ思った。
カブで、門司港駅まで一気に戻る。20分ほど。20分というとすぐなような気もするが、バイクで走る20分は少し体感が違う。20分間バランスをとっている。
予定よりも早く駅に着いたので、ベンチに座って少し仕事をする。カブは港に置いた。多分こういうことには寛容だろうなと思った。向こうから、Kと宿で出会った人二人が来る。一緒にMとIを待った。
※※※
K、M、Iと一緒に洋食屋で昼を食べて、港で少し過ごし、通りがかりの子供にジャグリングを見せてから、3人に見送られて出発。ここから久留米まで一気に走る。2時間半ほど。門司港を抜けてからはほとんど真っ直ぐ。山道を抜けていく。地図上で見た時は、山の中のひとけのない道を走るのかと思っていたが、それなりに家や畑はある道を通っていく。途中、余裕だと思っていたガソリンが少なくなってきて給油。現金のみの小さなスタンド。また走る。意外に暗くなるのが遅い。17時を過ぎてようやく暗くなってくる。南に走っていってるんだな、と思う。
久留米に着いたが、ホステルに着く直前まで、本当にここでいいのかな、と思う。周りがあまり明るくなかったからである。都市に近づくと、それなりに明るくなっていくと思っているが、久留米ではそれがあまりなかった。
着いたホステルの前にカブを停める。西鉄久留米駅の目の前にあるとても新しいホステル。入り口の上にはネオンサインがあり、中はおしゃれなバーのようになっている。一階が広いバーだ。カブの隣には自転車があって、ここに二輪は置いておけそうだ。受付を済ませて部屋に上がる。
部屋に落ち着いてからInstagramを開いたら、大学時代の友人Aが久留米にいるということがわかった。そう言えばそうだった。その場でチャットしてみる。するとすぐに返事があって会うことになった。一時間後には駅で会っていた。
歩いて街を案内してもらって、いつも通っているという焼き鳥屋に行く。席に着くなり、店員のおいちゃんに「焼酎でいいっちゃろ」と言われていて、なじみであることがわかる。でも今日はビールで乾杯してもらう。店にいるみんなの距離が近くて居心地がいい。それからすぐ近くのラーメン屋に入ってラーメンでしめる。
そのあと帰り際、雰囲気がいいバーの近くを通る。せっかくなら、と入ったら、中はまるで魔法学校のような佇まい。1957年からやっているそうだ。カウンターにいたのはもう今年で84歳だという女性。でも元気。昔の話をしてくれた。Aと同じ高校だというので、その話で盛り上がっていた。昔の写真も見せてもらう。
一杯飲んだだけで帰ったが、ひとり2500円だった。びっくりしたけど、でもいいお店だった。
明日は長崎に向けて走る。
2021年11月13日土曜日
踏み切り板をとべ - 九州の旅(3)
2021年11月12日金曜日
踏み切り板をとべ - 九州の旅(2)
2021年11月11日(木)フェリー「はまゆう」〜小倉
朝7時ごろに一旦目が覚める。寝床そのものは、小さいが快適だった。しかし、船がとにかく揺れる。地震でいえば震度3ぐらいの揺れが常に身を襲っている(横になっていると余計に浮き沈みがわかる)。寝入る前は落ち着かなくて、地震に似た揺れがくると反射的に身構えてしまい、なかなか寝つけなかった。それでも一応「朝」と言える時間に目が開いた。ひとまずズボンを履いてロビーに出てみた。
人はほとんどいなかった。そもそも乗船客が少ない。50人ほどだろうか。朝日が差し込んでいる。昨日の夜中には気が付かなかったが、この船の窓からは景色がよく見える。朝のうちにひと仕事しようかとも思ったが、どうにも眠いのでもう一度布団に入った。
8時を過ぎると、船中の明かりがついた。ロールカーテン越しに明かりを感じる。まだ眠いので、横になったまま目を閉じる。
「横須賀を目指す船それいゆとすれ違います、またとない機会ですのでぜひご覧ください」
と放送が入った。またとないも何も、毎日運行してるんだから1日1回はすれ違うだろう、と思った。
10時半ごろに、再び起きる。今度はぱっちりと目が覚めている。売店でクリームパンを買った。保存の効くパネトーネ種の小麦を使ったパンだった。わりに美味しい。レストランにあったコーヒーマシンでコーヒーも淹れて、朝ごはんらしくした。カフェオレを買ったのだが、やたらに甘かった。
大浴場に行く。浴室にいたのは一人だけで、露天風呂でずっと半身浴をしていた。僕もそこへ混じる。風がものすごい勢いで吹き付けている。水面に激しく波が立っていて、海の様子と共鳴している。これも昨日の夜には気が付かなかったが、屋上だけあって、一段と綺麗に海の様子が見えた。少し遠くに陸地も見える。
風呂を上がって、ロビーに戻り、しばらく机で仕事をした。とても静かだ。聞こえるのは、船の唸りだけである。隣にスリランカの人が座ってきた。話を聞くと、福岡に住んでいて、筑波から車を買って帰ってくるところなのだという。もう8年も日本に住んでいるというので日本語はとても流暢で、まるで日本で生まれ育った人かのようだった。
昼は、一回ぐらい行っておくか、と思って船内のレストランで食べた。長崎ちゃんぽん800円。安くもないし特別な味はしないが、美味しかった。横に、昨日横目で見ていた取材中の女性が座った。船に泊りがけで取材をしているのだ。
昼を食べて再びロビーの仕事スペースに行く。どうにも何か口にしていないと落ち着かず、缶コーヒーをちびちび飲みながら文字起こしと翻訳の仕事を交互に行った。途中で場所も移動して、レストランからの景色を描いたりした。持ってきた『コン・ティキ号探検記』も読んだ。たくさんのことを一度にやらないと落ち着かない。一個のことをじっとやり続けることができない。
今回の旅は、自身の生活態度と向き合うためのものだ。
「踏み切り板をとべ」というのは、加藤典洋さんという大学時代の師匠からもらった、文章への批評である。青木はいつまでも調べてばかりで肝心の中身になかなか踏み出さないけど、文章を書くには、どこかで踏み切り板を飛ぶ、もうそこから先は躊躇して線を越えたらアウト、という線を作るんだ、ここからはもう後戻りしないで、勢いよく飛ぶんだ、そういう書き方をしなさい、という主旨だった。
この指摘は、文章に対するもの、というよりも僕自身の性格に充ててなされた批評だと解釈している。加藤さんは、間違ってもいいからもうここを越えたら自分の選択についてつべこべ言わない、そういう「振り返らない」態度を持て、と言ったのだ。
九州を、いつも通り仕事をしながらバイクであてもなく旅する、というテーマとしてはごくシンプルなこの移動は、振り返らない、納得をどこでするか、という線引きをより明瞭にするための修行としての旅である。
自分でルールを決めるんだ。
そういうテーマのある旅である。
もうすぐ下船の時間になる。
※※※
下船する直前、件のスリランカ出身の青年と連絡先を交換した。歳を聞いたら同い年。「博多通る時はいつでも連絡してよ」という。旅は人を軽くする。
下船時、「新門司港の天候は雨です」という放送が入った。雨用の装備に着替える。人数が少ないせいもあるが、下船が始まってすぐにロビーの外に出た。カブに乗る。
出口まで徐行し外を見ると、嵐のようだった。風は強く、雨も激しい。この時点でカッパを羽織って、手袋も防水のものに替えておけばよかった。しかしただ単に嵐のように見えるだけなんじゃないか、という理由のない自信があって、そのまま外に出た。
案の定1分もたたないうちにびしょ濡れになり(当然です)、手も足も冷え込んできた。ここから小倉の宿まではおよそ30分。暗いし、寒いし、ひとけはないし、惨めな気分になる。しかも、船で長時間振動が加わったのが原因か、温度差か何かが原因と思うのだが、ブレーキをかけると停止直前にキイキイ音がする。靴は一足しか持っていない。濡れてしまうと明日以降が不快である。なんで靴用のカバーを持ってこなかったろうか。「持って来ればよかったものリスト」は旅の序盤から、いや、序盤こそどんどん更新される。簡単に動けるジーンズ以外のズボンも持って来ればよかった。ジーンズをいちいち履くのが面倒だ。散々旅をしていても、全然学習しない。
明日ユニクロにでも行って足りないものを買おう、と思う。
宿は、旦過市場という古い市場の横にあるホステル。その目の前に駐輪場があったので、そこにバイクを停める。
中に入ると、お姉さんが部屋まで案内してくれた。びしょびしょになった装備を絞ったりハンガーにかけたりして、明日までにそれなりに乾くことを願う。
ひとまずホッとしようと思って、ホステルの下にあるローソンでビールとお菓子を買ってきて、飲みながら本を読む。
バイクで旅をするというのがどういうことかを学習しているんだな、と思う。



