2022年10月11日火曜日

全部やる日記 15 どうしようもなくなるための自転車

 今日は一日、自転車で行動している。バイクよりも寄り道がしやすくて気分がいい。バイクで風を切って走るのは大好きなのだが、時速60kmで走っていると、余計なことを考えている暇がない。気を抜いたらバーンと車にぶつかる(まだそういう経験はしていないけど)。気が散りやすい僕にとってバイクはあぶない乗り物でもある。
 事故にならないよう、バイクに乗っている間の僕は、気を張りっぱなしだ。周囲のちょっとした気になることへの興味も、敢えて閉じるようにしている。だからバイクに乗っている時の僕は、オープンエアで颯爽と街を楽しんでいるようでいて、実はほとんどの物事を見落としている。

 自転車で1時間弱も走ると、とても遠くに来た感じがする。実際に僕がいるのは、いつも通っているカフェだ。バイクで来れば15分もかからないところ。でも受ける印象が全く違う。何かを成し遂げたのだ、という満足感と共にコーヒーをすすることになる。また、帰る時にも少し苦労して帰らないといけない、という予感があって、それがますます、今いる場所を特別に感じさせる。
 これは僕が「旅」に求めている感覚そのものだ。遠くに来てしまっていて、しかも、帰るのには時間と労力がかかる。「日常と離れてしまった」という諦観だ。僕は心配性だから、逆に旅に出たがるんじゃないかと思う。日常の些事にいちいち不安を感じているから、いっそそれに対して「僕にはどうしようもない」状態を作り出したいのじゃないか、と思う。

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