しばらく九州の旅に出る。カブに乗って、気が済むまで走るつもりである。道中では色々なところで仕事をしながら、ものを考えながら過ごすつもりである。
綴方でTak.さんに絵を渡して、夜9時に横浜の家を出る。
本当は8時半に出る予定だったが、支度が思ったよりかかった。バイクにどう荷物を積むか試行錯誤していたせい。
おおむね国道16号をまっすぐ下っていき、一時間と少しで横須賀に着く。横須賀に入った途端、5分間くらいだけアメリカを感じた。
道が広い、建物が平坦。
米兵がおり、英語を喋っている。
僕はマーベルコミックの映画シリーズにどハマりしているので、そのせいでアメリカンイングリッシュを聴くと気分が高揚する体になってしまっている。
フェリー乗り場は、コンテナが積んであるエリアを入って少し奥まったところにあった。旅という理由がなければ入らないであろうところに入っていくのは楽しい。乗り場はとても新しい。目の前でトラックが停車していて長いことかかっていたので、誘導の人をスルーしてとりあえずターミナルに向かい、停車する。
これから遠くに行く、ということがいつにも増して大袈裟な実感を持って去来する。とても、とても興奮する。
これか、これが欲しかったのか俺は、と思う。同時に、これは、新鮮なうちにこれからの旅の糧になるように、「やり方」として定着させなければいけないぞ、自分にとって旅とは、何が本質的にいいのかを見極めて、それを次のもっと大きな旅の時に同じようにできないといかんぞ、と思った。
なんでこんなに興奮しているんだろう?
イギリスに行く時よりも嬉しい気持ちでいるように思う。そうでもないかな。
乗船時間になり、最徐行でお願いします、と係の人が言う。それに従い、ギア1速のまま、車2台がすれ違えるぐらいの長く広いタラップを登り、はるか上にある(ように見える)船の中へと登ってゆく。船に入ると、青い棒のところまでカブを進めて固定してもらう。
歩いて船内に入る。明るい色、清潔な船内だ。一昔前の安い船旅はこうはいかなかっただろうと想像する。
小さな売店、ジム、露天風呂まである。とりあえず部屋に入る。一応最低ランクのバンクベッドの部屋で、カプセルホテルのような作りではあるが、とてもいい部屋だ。ロールカーテンの仕切りもあって、自宅の部屋よりも寝やすいかも。
荷物を置きしばらく船内を散歩した後、風呂に行く。大浴場だ。普通の銭湯くらいの大きさはある。サウナは、今コロナ対策だというので使えないが、それでも、最上級の贅沢をしている気分だった。僕が入った時には一人おじさんが露天風呂で外を眺めていたが、僕が入って2、3分したら出ていったので、独り占め。空を見上げて星を見た時、角幡唯介氏が北極で星を見たときの話をおもいだした。
風呂を上がり、売店でカフェラテ味の白くまを買う。取材で来たのだろうか、スーツを着た人がいる。横目で見ながらアイスを食べる。寝る前に今回の旅でやるべきことの弾みをつけよう、と思って、一番デスクワークがしやすそうな一人用の机を見つけ、ハガキ大のスケッチブックに絵を描き、日記と今日の感想を書く。
ひとつひとつ、「これが一番のやり方じゃないかもしれない」と感じながらでいいから、とにかく手を動かし、ものを作り出す。
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