2022年1月11日火曜日

雪掘り日記 - 十日町の古民家へ③「しゃけ、そば、最後の光」

昨日は夜10時前には眠りについていたから、朝もすっきり寝覚めがいい。

本当のところ、明け方5時には目が覚めていた。だが居間に行っても寒いだけなので、布団にもぐっている。じっとしていると、カリカリ、という音、なうー、とか弱い鳴き声なんかが聞こえてくる。そのたびに戸を少し開けて、猫がいるかどうか確かめる。いるときには、よしよしと撫でてやる。枕元にあるマスクに興味を持っていたので、ヒョイと動かしてやると、すぐに、頭を低く、腰を高くの臨戦体制になった。

8時に朝食。今日はご飯としゃけ。昨日はおにぎりだったから、今日は十日町の米をしっかり味わってもらいたくて、としのぶさん。こちらに来て、水とお米のおいしさに感動する。それでも十日町は新潟の中では水質はベストではない、とのこと。だけど横浜のアパート暮らしから比べたら比較にならないぐらい美味しい。

ご飯を食べてひと段落したら、上着と防水ズボン、長靴を着込んで作業へ。最終日の今日は、家の裏側の除雪も行う。かんじき(忍者が水上で履く「あの」靴みたいなもの)をはいて、新雪の上を歩いて行って、裏へまわる。雪はこんもりと積もっている。家の周り全体を高さ数m、すっかり覆っている。その上を歩くのだ。

本当は家の裏には、暖かい季節にはピザが焼けるような薪窯がある。それもすっかり覆い尽くされていた。その周りの雪をある程度どける。

裏がひと段落つくと、今度はまた表にもどってきて、道を少し広げたり、灯油タンクの周りをすっきりさせる。4人で行うとあっという間に雪はどけられる。全部で2時間半ほど作業をして、おしまい。最後に記念撮影。

お昼は蕎麦を食べにいく。すぐに行くと混んでいるから、というので少し家で猫と戯れてから。もう今日でお別れなので、いつもより入念になでなでしておく。

車で「清兵衛」という蕎麦屋まで行く。民家をそのまま蕎麦屋にしたようなところ。へぎそば、というものが出てくる。「へぎ」というのは、どじょうすくいのあのカゴのような器のことで、それで出てくるのがへぎそば、ということである。しんごさんが「蕎麦湯が美味しいんです」というので、食後に出てきた蕎麦湯を試したが、確かに、美味しい。どろっとしていて、つけ麺の後のスープのような、濃厚な味わい。

そこから、ジェームズ・タレルというアメリカのアーティストがデザインした「光の館」を見に行く。

車で少し山を登ったところにある。着いた時には2時35分。どうも受付に人がいない。しばらくすると女性が出てきて、説明してくれた。僕らはてっきり3時半が最終入館だと思っていたら、どうも締め切りは2時半であったらしい。だが、どこから来たんですか、というので、神奈川です、と言うと(僕以外にもう1人手伝いに来ていた女性も、川崎から来た人だった)少し考えて、「ちょっとでよければ」と言い、中を見せてもらえることになった。

「光の館」は、泊まって体験できるアート、という触れ込みである。和室の屋根が動いて、部屋の中まで陽が差してくる。ちょうど僕らが言った時には、十日町はすっかり晴れていて、四角い穴の空いた屋根から注ぐ陽光が、角ばった陰影を作り出す。お風呂やキッチン、外を巡る回廊も見せてもらったが、とても感じが良かった。僕はこういう上質な情報だけで満たされたシンプルな空間が好きなのだ、ということを認めよう、と思った。気候と、一緒にいる人と、それからガイドさんの親切心も手伝ってのことだとは思うのだが、とても幸せな気分だった。

最後に、十日町駅の近くにある、キナーレという施設に行く。MonETという名の現代美術館もこの施設の中にある。だが時間もないのでパス。

今回は、同じくキナーレに入っている「明石の湯」という温泉へ。結局、毎日温泉に入った。

1時間弱、そこでゆっくりしてから、最後は車で十日町の駅まで送ってもらい、そこから横浜への帰路についた。上越新幹線の中では、くたびれてぐっすり眠った。

※※※

この日記を仕上げている今、僕は横浜の家で、暖房の効いた室内でMacのキーを打っている。

iPhoneで雪景色の写真を見ながら、少しだけ、寒気を頭の隅っこで感じる。

これはまだ昨日のことだ。

まだ手では、雪の感触が思い出せる。

7匹いた猫たちの毛並みの感触も思い出せる。


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