さっきまで文字起こしをしていた。その中で、香道の話が出てきた。5種類の香木を5カケラずつ用意し、その中から5つを無作為に選び、順番に「聞いて」いって、どれとどれが同じだったかを当てる、という「源氏香」という遊びが紹介されていた。
何番目と何番目が同じだったか、ということを図に落とし込み、その図柄によって源氏物語の巻に当てはめて遊ぶのだという。
話しているうち、香道の先生は、全部で52の組み合わせがある、と言った。なんだかちょっとピンと来なかったので(予想より少し少ないような気がして)久しぶりに、紙とペンで組み合わせの計算をした。
でも、パッと証明ができなかった。
何より、あれ、と思いながら、紙にペンを走らせるのだが、どうにもうまく集中できなかった。2秒くらいで、別のことを勝手に考えてしまうのだ。
ある一つの問題について考えようとすると、頭が真っ白になってしまう、というか、強制的に別のところに思考が移行してしまうというか、生理的に集中ができない頭になっていることに気がついたのだ。普段文章を書いたり、話をしたり、という程度の日常生活の中では感じていなかった思考の持続時間の短さ、要はアテンション・スパンの極端な短さを、ありありと意識せざるをえなかった。
結果的には、この計算は少々場合わけの必要があって、(1〜5という香りが用意されていたとして、AABAAみたいな組み合わせだった時、AとBにそれぞれ例えばA=1,B=2を代入しても、A=3,B=5と代入しても、一緒とみなす、という部分に気がつくのにちょっと時間がかかった。要は「同じかどうか」と「順番」だけが区別の対象なのだ、だからお香の種類の割に、ちょっと組み合わせ総数が少ないと思ったのだ)この計算がパッとできなくてもまぁそこまで恥ずかしい事でもないんだけど、なんだかぼくは気落ちした。
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