2021年11月20日(土)
朝は8時ごろ起きる。やっぱり部屋が暗い。シャワーを浴びる。ホステルは現代的な設備が整っていて清潔で、快適である。書き物をしたりする空間があまりなく、その点はいまいちだが。しかしホステルを出て駅前にはいろいろなカフェが揃っているし、かえって外に出る気になるのでいいかもしれない。
今日はバイクで近隣まで出かける予定だが、少し仕事をしたい。駅前で済まそうかとも思ったが、しばらく考えて、カブで商店街の方へ出て行く。駐輪場の場所はもう大体把握している。2時間までは無料だし、それ以上いてもたった100円。駅前の駐輪場に至っては無料だから嬉しい。商店街の中のカフェ・サンマルクに入る。フレンチトーストとコーヒー。文字起こしの残りをやる。
寒いので、上着を買いに古着屋を回る。サンマルクの向かいの店や、そのまま上通りを行って何件か回ったところ、最後に、ここでなかったら諦めよう、と思った店で話しかけてくれたお兄さんがとてもいい人だった。バイクに乗る人だ、というので色々と情報をもらう。こんなのが欲しくて、というと、何着も出してきてくれる。お兄さん、店内を走り回る。ここで働くのが楽しいんだろうな、と思う。こういう縁を求めていたのだ。「これはやっぱりお値段はしますけど、でも一番いいです」と言って出してきた服を僕が試着すると確かに着心地良く、雨も風もバッチリ防いでくれそうだった。僕が鏡を見ていると、お兄さんは、「ね、よかでしょう!?」ととても嬉しそうに言うので、これには抗えなかった。お兄さんは終始熊本弁で、阿蘇のよさを語ってくれた。阿蘇市出身なのだそうだ。「阿蘇に行くなら間違いなくこれです」だそうです。店を出ようとした時、「そうだ、ちょっと待ってください」といって店の奥に走っていき、手にスチール缶の十六茶を持って出てきて、「これしかないですけど、どうぞ」と言って、くれた。
宿に戻って、先日バイクの関連で意気投合した宿のHさんと待ち合わせをして、近所の温泉に行く。これは、橙書店の久子さんがとてもいい、と薦めてくれたところである。ちなみに、古着屋のお兄さんも、「温泉、よかですよ」と言っていた。
駅から西に進み、時折ギア2でも苦しいくらいの山道を登っていく。途中、宮本武蔵がそこで五輪書を書いたという祠の霊巌堂にも寄り、全行程が1時間ほど、ちょうど、夕日が見られる午後4時半ごろについた。途中見た、山腹に沿ってぎっちりと広がるみかん畑と山々の様子が美しかった。
温泉の入湯料は600円で、絶景が見られる温泉にしては非常に安い。
いそいそと露天風呂に直行して、石造りの浴槽から、雲仙岳に向かって沈んでいく夕日を眺めた。
浴槽の前には一切壁がなくて、前に住んでいる人たちが目を凝らしたら、こちらが見える程度の距離にある。すぐそこは坂になっていて、その向こうに裾野が広い山並みと、その前に広がる穏やかな海。色合いは鈍い。
完全に日が沈むまでの30分の間で、露天風呂に少しずつ人が集まってきていた。
太陽が山に差し掛かって半分くらいになっていた時には、10人ほどのおじさんが集まって黙ってそれを見ていた。
いよいよ太陽が山にかかって、最後の光がぽっと消えた時、「おぉ」と一斉に声がした。
映画が終わったあとみたいに、戻る人はそれぞれまた中に戻っていった。
海岸線側を通って熊本駅に着く。そのまま、気になっていた「にぼらや」のラーメンを食べにいく。優しい味で美味しかった。
ロビーで少しゆっくりしてから、夜12時ごろ就寝。